エピソード㉖ジェンダーハラスメント

ひよ先生のコラム

いつも明るくて、よく気が付く、保護者からとても人気のある男性保育士Y先生。
思ったことははっきり言うタイプなので、裏表のないサッパリした性格です。

   

Y先生が勤める園では、発表会のときのステージ壁画を、新人や若手の先生たちが準備することになっています。
ここ数年は、費用や作る時間を考えて同じ壁画を使っているので、先輩に言われた通りにやればできる仕事です。

ところが、兄姉がいる一部の保護者から意見があったようで、Y先生は、壁画を作り直したいとリーダーに申し出ました。
リーダーは、その必要はないという考えですが、納得がいかないY先生は、新しい壁画案と材料費、人員と時間を計画して、主任先生に提案しました。
その提案内容を基に、壁画を作り直すことになったのです。



このことをきっかけに、Y先生に対する先輩方の接し方が厳しくなりました。

Y先生「(先輩)先生、お手伝いをお願いできますか。」
先 輩 「 Y先生なら、一人でできるでしょう。」

Y先生「(先輩)先生、去年はどのようにしていたか、教えていただけますか。」
先 輩 「 去年のは参考にならないでしょう。新しく考えたらいいじゃない。」

そのほかにも、「男のくせに」「若い男の子だから、保護者に人気があるんじゃない」「力仕事は男性にお願いします」といった感じで、段々とY先生は孤立していきました。

同僚の先生方は、Y先生を擁護したい気持ちはあるものの、自分も同じようにリーダーから冷たくされたらどうしようと、怖くて助けることができませんでした。
これは、パワーハラスメントやセクシャルハラスメント、ジェンダーハラスメントでしょうか?

ジェンダーハラスメントとは

ハラスメントとは、人に対する嫌がらせを意味します。
ジェンダーハラスメントは、求人募集・雇用形態・配置(職種)・昇給・降格・教育訓練・福利厚生などについて、男女いずれかに限定や優先したり、条件を男女で異なるものとすること、能力および資質の有無等を判断する場合に、その方法や基準について男女で異なる取扱いをし、人の行動を制限する発言や態度のことを指します。

具体的には、「男(女)はこうであるべき」「男(女)らしく」「女(男)のくせに」「女(男)には任せられない」といったように性別に関する嫌がらせや不公平な扱いをすることです。

⚠️客観的・合理的な違いが存在しているか否かにより判断されるものであり、その判断に当たっては、単なる形式ではなく、組織の雇用管理の実態に即して行う必要があります。

⚠️労働基準法の規定により、女性を就業させることができない、または保健師助産師看護師法の規定により男性を就業させることができないことから、通常の業務を遂行するために、労働者の性別にかかわりなく均等な機会を与えること、または均等な取扱いをすることが困難であると認められる場合などの例外があります。
〔参照;厚生労働省 男女雇用機会均等法および指針〕

ハラスメントによる影響

ハラスメントは決して許されることではありません。
被害者やご家族に大きな傷を残すことになります。
加害者にとっても、公になれば、職務規定により対処されることになります。
訴えられた場合は、慰謝料や賠償請求される場合があります。
組織のイメージが悪くなり、保護者や地域の評判に影響します。                      
新しい職員の採用も難しくなるでしょう。
結果、園児への保育に大きな影響を与えることになります。

組織でハラスメント防止に取り組もう

個々の意識を高め、組織全体で取り組むために、以下のような内容について研修を行っています。

*ハラスメントの概念について
*ハラスメントの種類(パワハラ以外でも、ハラスメントになるものとは)                 
*加害者の心理やハラスメントを起こす背景を考える
*怒りの感情をコントロールする
*被害者に対する相談窓口の設置や相談員の役割
*組織的にハラスメントを起こさない仕組み作り など

マナーとして、女らしさがある方がよいと思うことはあります。
男性の役割や女性の役割を重んじて育ってきた世代や環境もありますので、個々の思考を否定はできません。
ただ、自分の考えを相手に押し付けないようにし、世の中がジェンダーレスになって来たことを認識することが大切です。

保母→保育士、看護婦→看護師と変わり、 “男性保育士”“男性看護師”“女性機長”と呼ぶことは、ジェンダーギャップですね。
子どもたちが社会人になる約15年後には、性別に関係なく、なりたい職業に就ける可能性が広がることを期待します。

タイトルとURLをコピーしました