エピソード⑧職員採用ポイントその1⃣【事例を基に考える】

ひよ先生のコラム

ある園の職員面接でのことです。
面接官は、理事長先生と園長先生、主任が担当しました。
試験監督として、系列園のベテラン職員も参加することになりました。
まずは、法人について・園の歴史や方針について・園施設について・待遇について、などの説明がありました。
主任は後ろの席で、応募者を観察していました。

説明が終わり、理事長と園長は面接部屋に移動し、個別面接の間、他の方は筆記試験を受けます。

ベテラン職員が筆記試験の概要を説明し、監督をしました。
応募者は、少し緊張が解れたのか、肘をついて書いたり、スリッパを脱いで足元がだらしなく見える人がいました。

試験終了時間になり、解答用紙を集めると、肩が凝ったのか、大きく背伸びをする人、机の上の消しゴムのカスを床に払い落とす人、机の端に集めて置いて行く人、カバンからティッシュペーパーを出して消しゴムのカスを集め、持ち帰る人もいれば、園のゴミ箱に捨てて行く人もいました。

さて、個別面接では、
「お越しいただいた順番に面接をします」と告げると、時間ギリギリに来た人が、「何時頃に終わりますか?子どもを友達のお母さんに預けて来たので、出来るだけ早く終わると助かるのですが」と訊いて来ました。
園側は、12時までの案内を出しているので、それまでには終わる予定であることを伝えました。
それでも、「少しでも早く終わるでしょうか?」と訊き返します。
すると、2番目の方が、「私は急ぎませんから、順番を換わりましょうか?」と申し出てくださいました。
「ありがとうございます。他の方、よろしいでしょうか?」と全体に訊くと、反対の意見はないので、順番を換えていただくことにしました。

理事長と園長は、履歴書を見ながら質問をしていきます。
「このような条件ですが、よろしいでしょうか?」 「はい」
「こういうことがありますが、大丈夫でしょうか?」 「はい」
応募者は姿勢よく、笑顔で答えていました。

「主任から何か質問はありますか?」
「では、自分の担任クラスの子ではないのですが、子ども同士でケンカをしているのを見たら、あなたはどうしますか?」と訊くと、
「え~と、・・・」
短く答える人、感情を込めて熱く話す人、話にまとまりがなく長々と話す人、結論に結びつかない人もいました。

全員の面接が終わり、応募者が帰った後、どなたを採用するか検討しました。

理事長「園長、どの人がいいと思いましたか?」

園 長「Aさんは、大きな園での経験があり、ハキハキしていて、一番よかったと思いますね。」

理事長「私もそう思うよ。やる気が感じられていいよね。主任はどう思う?」

主 任「そうですね・・・Aさんは、何だか、気になりますが・・・」

理事長「何が気になるんだ?」

主 任「ちょっと、気が強そうに見えますし、女性の多い職場ですから、他の職員とうまくやっていけるか心配です。」

理事長「やる気があるからそう見えるんだろう。みんなに刺激になっていいだろう。他の園での経験も、みんなには勉強になるんじゃないか?」

主 任「私の質問に対して、熱意は感じましたが、決めつけるようなところがあるようで、保護者との会話の場面で、伝えるべきことをうまく伝えられるのか心配です。」

理事長「いきなりの質問だから、うまく答えられなくても仕方ないだろう。実際に勤めている園だったらイメージできるだろうけど。」

主 任「そうですよね・・・。正しい答えが欲しかったわけじゃないのですが、もう少し話し方が・・・」

園 長
 「じゃあ、どう答えて欲しかったんだ?勤めてもいないのに、今はまだ無理だろう。」

主任は責められているようで、どう言ってよいのかわからなくなりました。

理事長「(ベテラン)先生は、どう思う?」

ベテラン先生「筆記試験の最中ですが、スリッパを脱いでだらしなかったり、消しゴムのカスも机の上にそのまま置いて帰りましたし・・・」

理事長・園長「そんなこと!?」

主任とベテラン先生は、それ以上、意見を言うことができなくなりました。

採用になったAさんはというと、理事長や園長に認められて自信を持ちました。
事ある毎に前の園の例を出して、みんなを変えようと張り切ったのですが、
他の職員から「新人のクセに生意気」と思われてしまい、Aさんはどんどん孤立して行きました。
結局、1年で退職することになったのです。

主任やベテラン先生の意見はわかりますが、それを理事長や園長に納得してもらえるような理由づけや話し方ができなかったのですね。
男性と女性の視点、ベテランと若手の視点、立場による視点など、 人によって注目する点が異なります。

では、採用する際に、どのような点を注目したらよいでしょうか。⇒【履歴書の見方】へ、つづく

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