エピソード⑬パワハラは突然に

ひよ先生のコラム

栄養士として保育園で働き始めたA先生。
新卒の若いA先生は、やる気と正義感に溢れていました。

A先生の勤める保育園では、3歳以上児クラスは毎月1回、おかず込みのお弁当の日があります。
職員もお弁当持参なのですが、料理が苦手な人や早番だと作れないという場合もあるため、
コンビニなどで買ってもよいので、お弁当箱に詰め直したり、サンドイッチならラップに包むように、
職員会議で決まりました。
保護者にはお弁当をお願いするのに、職員が買ってきたものをそのまま子どもたちの前で食べるのは良くないだろうという趣旨です。
買ってきた物を、給食室の端でお弁当箱に詰め直し、みんながルールを守っていました。

ところが、数か月経った頃、遅番の先生が、他の先生の注文も受け、ファストフード(チキン)を買ってくるようになったのです。
しかも、未満児クラスのお部屋で、子どもたちがお昼寝に入った後、チキンの箱をそのまま開けてかぶりつくように食べていました。
匂いはするし、早めにお迎えにいらっしゃる保護者の目もあります。
A先生は給食を担当する栄養士として注意したいと思いましたが、数名の職員の中に、主任先生も含まれていたため、誰に相談してよいのかわからずとても悩みました。

翌月も・・・
そのまた次の月も・・・
3か月続き、とうとう、注意することを決心したのです。

職員室に主任先生だけがいらっしゃるときに、勇気を出してA先生は話すことにしました。
栄養士の職務として、正しい判断だと思ったのです。

A先生は主任先生から、「A先生、そうよね。申し訳ない。今度からみんなでルールを守るようにしないとね。」というような言葉を期待していました。

ところが、主任先生は怒って、こう言ったのです。
「A先生!そう思っていて、なんで3か月も黙っていたの!」
そして、他の職員には、
「みなさん、A先生に叱られるので、今後気をつけましょうね。」

それから、主任先生によるイジメが始まりました。
事あるごとに、「A先生に叱られるから」ということを口にされるようになりました。
「A先生は関係ないわよね。」
「A先生、知らなかったの?」
というように、情報は入らず、仲間外れにされました。
みんな標的になりたくないため、主任先生に従うしかないという様子で、味方になってくれる人は誰もいませんでした。

パワハラは1年以上続きました。
A先生は、精神的なストレスから膵炎を患い、退職することになってしまったのです。

その後、A先生はもう保育業界には戻りたくないと思い、一般企業に勤めることにしましたが、人間関係への不安がトラウマになりました。
このお話を伺えるようになるまで、10年以上かかりました。
A先生は、当時を振り返っても自分の考えは間違っていなかったと思う、ただ、上司である主任先生に対する言葉選び・タイミング・話した時の相手の気持ちを推し量ること・新人の自分が話すべきだったかなどは、若さゆえ、考えられなかったことを反省していると言っていました。

ハラスメントによる影響

ハラスメントは決して許されることではありません。
被害者やご家族に大きな傷を残すことになります。
加害者にとっても、公になれば、職務規定により対処されることになります。
訴えられたら、慰謝料や賠償請求される場合があります。
組織のイメージが悪くなり、保護者や地域の評判に影響します。                      
新しい職員の採用も難しくなるでしょう。
結果、園児への保育に大きな影響を与えることになります。                                  

パワハラの種類<6つの行為類型>

① 身体的な攻撃
② 精神的な攻撃
③ 人間関係からの切り離し                                        
④ 過大な要求
⑤ 過小な要求
⑥ 個の侵害                                                  
厚生労働省:パワーハラスメントの定義について<雇用環境・均等局>

組織で取り組む

*ハラスメントの概念について
*ハラスメントの種類(パワハラ以外でも、ハラスメントになるものとは)                 
*加害者の心理や起こす背景を考える
*被害者に対する相談窓口の設置や相談員の役割
*組織的にハラスメントを起こさない仕組み作り など                                 
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